その2
   

 上品でも野良ちゃんなので、警戒心が強いです。のぞきに行けばおびえて、仔猫を食べてしまいかねません。みんなで遠巻きにして見守ってました。
 一匹ぐらいならうちで飼っても、という気持ちもありましたが、正直、ちと重荷でした。
 わたしはこれまで、ハムスターしか飼ったことがありません。数年の命へなら「一生をお守りします」と言えます。けれど猫は、二十年生きることもあります。二十年もの先の未来まで、引越も免職も倒産もなく現在以上の生活水準を、絶対に保障する、というのは、自分に自信がありませんでした。わたしのはともかくダンナの会社は、明日つぶれてもおかしくない大不況のさなかでした。

 里親がみつからず、ケツに火がつきつつある5月末。
 マンション敷地内に、植木伐採が入りました。
 朝一番で、敷地すべてがチェーンソーの音に包まれました。見知らぬ人、音、匂いは、猫の天敵です。ハナちゃんは半狂乱です。仔猫を連れて、安心できる場所を探して逃げ回りました。けれどどこまでも、チェーンソーが追ってきます。子育て用の草むらが、ひとつ、またひとつと消えていきます。

 ついに観念したのでしょうか。一階マンション管理人室へ、ハナちゃんが逃げ込みました。仔猫をくわえてひらりと飛び降りてきて、お辞儀をしたそうです。「仔猫を頼む」と、その目が言っていたそうです。
 ハナちゃんは子供を置いて、姿を消しました。

 マンション管理人のご夫妻が「ハナが来た」と、内線で電話をくれました。
 わたしは飛んでいきました。とにかくハナの子供を見たかったのです。
 ダンボールの中で仔猫が二匹、身を寄せあって、不安げに震えていました。ふわふわで産毛だらけの体をそっと抱きあげると、ぬくもり求めて、胸にしがみついてきました。

 その瞬間、墜ちました。
 世界がまっ白になって、 仔猫とわたししか、いなくなりました。

 そんなわけで我が家にやってきたのが、この子たちです。
 左がダヤンちゃん。ワチフィールドの猫そっくりです。
 右がミミちゃん。なんとなくそんな顔だったので。
 ふたりとも女の子です。