その3
   
 えらい騒ぎになりました。
 まだ離乳前。哺乳瓶でミルク飲ませるのも一苦労。ちょっとしか飲んでくれません。
 チッチもウンチも、自分でできません。野生ならママがおしりをなめて、舌の刺激で排泄します。うちにはママがいないから、コットンをお湯で人肌にしておしりを刺激します。チッチはすこしずつ出るけれど、ウンチはまったく出ません。徹夜でインターネットで育て方情報集めるけれど、どのケースも、うちの子のケースとすこしちがう。
 ノイローゼになりそうでした。

 毎朝、マンション管理人さんに預けて出社します。夜は寝ずにお世話と情報収集します。
 とうぜん昼は仕事にならず、外回り営業なのをいいことに公園のベンチで仮眠してました。
 疲れ果ててました。頭の中は、ウンチとミルクのことしか入ってませんでした。
 この期のわたしの営業成績は、地に落ちました。

 今日ウンチ出なかったら病院へ行こう。
 そう決心して出社して、戻ってきた日。預けていた管理人さんご夫婦の前で、なんと2匹とも、初の自力でのウンチをしてくれていました。記念のウンチを見たとたん、嬉しくて、ホッとして、仔猫を抱いて床に泣き崩れました。
 おかげさまで、いまだにウンチが大好きです。黒茶のウンチは命の証拠。今日も幸せでいた足跡で、きっと明日も生きててくれるだろう予約券です。

 あっというまに大きくなりました。
 離乳食も食べるようになり、カリカリも缶詰も食べられるようになり、ねこじゃらしで遊べるようにもなりました。
 お世話に手がかからなくなると、行動範囲が大きくなります。いろんなものを壊すようになります。パソコンは三台やられました。とにかく危険だから、食卓も文具類もOA台も、リビングから撤去しました。うちで陽当たりがいいのはリビングだけなので、猫を撤去するわけにはいきません。
 家中をあっちとこっちと直していったら、改装費とOA修理費とで、貯金がパーになりました。
 でも家中が、猫用になりました。これで昼間も安心してお仕事できます。

 貯金や仕事は、あとでいくらでも取り返せます。けれど天使たちとの時間は、あとわずか十数年しかありません。いつかくる別れの時に後悔しないよう、今日という日を精一杯、生きていたいです。