その16
   

 ピューマなどの猫科の動物で、曜日がわかる賢い個体がたまにいるそうですが、翠も曜日がわかります。路上時代も、土日と平日とでは行動範囲を変えていたそうです。

 その日は日曜でした。
 翠はダンナにべったりで、ダンナのあとをどこまでも、忠犬ハチ公のようについていく子です。
 たぶん翠はその日一日、ダンナと一緒にいられると期待してたのでしょう。ところがダンナは朝から、仕事関係のセミナーに出掛けてしまいました。
 翠はダンナを求めて、いつまでも、部屋から部屋へと、家中を探し回ります。
「パパどこ? ねえ、パパは?」
 せつなげに鳴いて訴えて、わたしにすがりついてきます。
 かわいそうでした。

 不安になりました。
 最高の里親さんがみつかったとしても、この子は新しい家で、ダンナなしで、ちゃんと暮らしていけるんでしょうか?

 翠は、うちの子になりました。最高の里親をみつける約束は果たせなかったけど、安住の地はゲットしたかと思います。
 翠とダンナは本当によく似ています。頭にゴミつけてボーッとしてるダンナを、翠、と呼び間違えそうになることもあります。最高の家とママはないけど、たしかに血のつながったパパは、あげることができました。
 これからは翠、ミミとダヤン、五人家族で、暮らしていきます。
 たぶん今が、わたしの人生で、最高に幸せな時なのだと思います。

[猫缶HOME] [NEXT]